【映画】シン・ゴジラを観てきた

2016年9月6日

庵野秀明氏が監督や脚本や編集やを務める、最も新しいゴジラを観て参りました。
何と言うか……凄い。
良く邦画で、ここまでの物を作ったなあ……と感心しきりです。

普通にネタバレしようかとも思いましたが、まだ観るのを迷っている人もかなりいそうなので、今回はネタバレは極力抑えていきたいと思います。
文才の無い私は、それやると書く事なくなるのではないですかねえ……(白目)。

公務員が頑張る映画

さて、まず最初に書いておかなければいけない事があります。
それは、この映画は……上映時間の半分ぐらいを、会議が占める事です。
冗談じゃないですよ?(笑)

この映画は『日本がどうゴジラと戦うのか』……と言うお話です。
ゴジラは一言で言えば、ひとつの国を滅ぼせるレベルの大災害です。
なので個人は役に立たず、国が一丸となって立ち向かわなければいけません。
では国を動かしているのは……と言うと公務員なのですよね。

話は戻りますが、大規模な事故やマスコミへの対応など、全ては会議ありきです。
まずは会議で話し合い、方向性が定まったら動く……。
好き勝手やってたら国として成り立ちませんから、当然ですね。

なので、お話の半分ぐらいは色々な会議になるのです。
私自身は緊張感のあるその過程をワクワクしながら観る事ができましたけど、これがつまらない、と言う人もたくさんいるはずです。
この辺りが、この作品の評価が分かれる要因のひとつになっていると思われます。

リアルな政治的対応

映画の中での政治家たちは有能なエリート民族ですが、それでも法律が足枷となって上手く動けません。
しかし相手は最強の虚構のため、法律の隙間を上手く突きつつ、必死で対応していきます。
その過程が、実に面白い。
官僚政治家のやりとりは非常に生々しいですし、最初の方の対応が常に後手に回る所など、実に日本らしい。
実際、政治家や自衛隊にゴジラが出現したらどうするか……と言う事を調査した上でストーリーが練られているそうなので、その辺りの描写はかなりリアルです。
この映画は怪獣映画と言うよりは、政治ドラマと言った方がしっくりときますね。

無駄な要素は一切排除

さて、この映画には一般人は数える程度しか出てきません。
しかも出てきたとしても殆ど1カット程度であり、物語に関わってくる事はありません。
それどころか避難所の様子や、人間ドラマ等もバッサリとカット。
あくまでも主題は、日本政府VSゴジラです。
ゴジラと言う災厄の前に、政府の活動が淡々と描かれるだけです。

本来であれば政党同士のいざこざなど、TVで良く見られるような光景が頻発する訳ですけど、その辺りも一切カット。
国会前のデモも、チラッと出てきただけ。
余計な過程を排除したお蔭で、お話のテンポがとても宜しいです。
中だるみなどありません。

また、登場人物が非常に多く、それぞれに肩書入りのテロップが表示されたりしますが、その時間、実に1秒程度。
読ませる気と言うか、最初から覚えさせる気がありません(笑)。
これは手抜きでは無く、別に名前を覚える必要が無い……と言う事ですね。
また、専門用語を交えて特には早口で喋ったりしますが、その擁護解説的な物もありません。
それなりの知識がないと、何を言っているかがさっぱりです。
さっぱりなのですが、実際観ていて、何も困りませんでした(笑)。

どういう事かと言うと、それぞれがどういう役割で、どういう手続きでゴジラ対策を進めていくのか理解できれば十分なので、個など必要ないと言う訳です。
用語は意味が分からなくても、何をしようとしているのかが分かれば十分ですしね。
正直、上手い手だなあ……と思いました。

それは主人公にも言える事で、主人公はあくまでも『主人公っぽい人』と言う扱いで、政府の一パーツとして扱われています。
恋愛要素や、家族愛、過去のドラマ等もなく、淡々と政府の視点で物事を解決していきます。
この作品では、登場人物が全て主人公と言って良いかも知れません。
それ程までに、個が埋没している訳です。
実にすっきりしています。

出てくる怪獣はゴジラさんだけ

肝心のゴジラさんです。
その姿には賛否両論でしたが、蓋を開けてみたら、チートスペックの大怪獣でした。
それは一言で書けば、『進化する怪獣』。
『ARMS』と言う漫画がありましたが、ジャバウォックを彷彿とさせる進化っぷりです。
お馴染みの放射能火炎も演出のヤバさが増していて、正直「なにこいつ……」と下手なホラーよりも震える事ができます。
攻撃力がハンパなさすぎて、絶望感が初代レベルであります。

他に怪獣は一切出てきません。
なので、大体の人が期待する怪獣プロレスは一切ありません。
今回のゴジラは、人類が初めて遭遇する怪獣であり、その非常識さも飛びぬけています。
あくまでも日本VSゴジラ……と言うコンセプトですね。

割とエヴァネタが入っている

評価が分かれる理由その2。
割と、エヴァンゲリオン関連のネタが、所々に入れられていたりします。
分かりやすいのが『DECISIVE BATTLE』でしょうか。
ヤシマ作戦、会議等で流れる曲……と言えば、エヴァを見たことある人ならピンと来るのではないでしょうか。
そう言ったエヴァを知っていればニヤリとするようなネタが、様々な所に見受けられます。

ですが、そう言うネタが嫌だという人も勿論いるでしょう。
それは仕方がないと思います。
私は左程気になりませんでしたが、その辺りは妥協するしかないのかなあ……と思います。

結局、面白いのか?

ネタバレなしだと、書く事が無くて困る(笑)。

さて。
この作品は確実に面白いです。
ゴジラ映画の中ではトップクラスと言ってもいいでしょう。
ただし、盛り上がりそのものには非常に欠けます。

ハリウッドの映画なら鬨(とき)の声を上げるような場面でも誰も騒ぎませんし、怪獣同士のガチバトルもありません。
自衛隊も派手な兵器で攻撃を繰り広げる訳では無いですし、人間ドラマなど皆無に近いので、盛り上がりようがありません。
こう……拳を握りしめるような熱い展開が殆ど無いのですよネ。
ある意味フラストレーションがたまる仕様。
おっさん達(登場人物たちの事)は熱く行動していましたが、そう言うのを期待して観に行く訳ではありませんからね……。

それ故、全体的な印象は地味です。
ゴジラの破壊行動は凄まじい物がありますが、画面狭しと暴れたかと言うと首を捻りますし、自衛隊とのバトルも淡々とした物でした。
とにかく、一般人視点での盛り上がる場面が殆どない。
少なすぎます。
子供が楽しめるかと言うと、かなり微妙ですね。
好きそうな子はいるかも知れませんが(笑)。

そんな作品なので、拳握る展開を期待して観に行くと肩透かしを食らいます。
また最初に書いた通り会議シーンがかなり多いので、それらを楽しめるかどうかが鍵かと思いますね。

殆ど何も書いてないに等しいですけど、シン・ゴジラはマンネリ化した怪獣映画の中から飛び出した革命的な作品です。
特撮のお約束を無視し、芸能人、アイドルを排除し、お涙、恋愛、家族愛も排除し、臭い演出すら排除し、好きなようにやった結果がこの作品なのではないでしょうか。
散々地味地味と書いていますが、静かな興奮を最後までずっと味わえる映画です。
絶対面白い……とは言えませんが、合う人には至高の作品のひとつになると思います。

映像映画

Posted by 対月